「宮入慶之助記念館開館20周年記念講演会」参加記
(2019年11月16日)

「宮入慶之助記念館開館20周年記念講演会」に参加しました

2019年11月16日に長野市篠ノ井で開催された「宮入慶之助記念館開館20周年記念講演会」に参加しました。同記念館は、日本住血吸虫症の中間宿主(ミヤイリガイ)を発見した宮入慶之助(1865-1946)を顕彰する目的から、1999(平成11)年に宮入家の御子孫によって作られ、現在は山口明さんが3代目の館長を務めておられます。規模は決して大きくはありませんが、現物史料の展示、『宮入慶之助記念館だより』の刊行、及びホームページ(https://miyairikinenkan.com/)などを通して、宮入慶之助の足跡を我々に伝えてくださっています。

今回、ご講演された方々とタイトルは以下の通りでした。

・宮入健三「宮入慶之助記念館のあゆみ―各種関連資料を求めて―」

・薬袋勝「ミヤイリ貝とたたかった一地方の80年」

・太田伸生「東アジアの日本住血吸虫症対策―ミヤイリ貝との戦いの終章に向けて―」

・山口明「宮入慶之助の生涯をふりかえる」

最初に2代目館長を務められた故宮入源太郎氏の弟さんに当たる宮入健三氏が、記念館の20年にわたる足跡と資料収集についてお話されました。続いて、山梨県衛生公害研究所で日本住血吸虫症対策に長年従事されてきた薬袋勝氏、国内外でこの病気の研究にご活躍されている太田伸生教授から日本住血吸虫症への取り組みについての報告がありました。そして、最後に山口明館長が、ご自身が調査した歴史資料などを利用しながら、宮入慶之助の生い立ちから晩年までをご紹介されました。

当日は、地元の自治協議会の後援ということもあり、地域の方々が20名ほど参加しておられました。宮入慶之助の寄生虫学研究者としての側面は、もちろん、我々の重要な研究対象ですが、どのような風土や教育環境のもとで彼がはぐくまれたのかということも、また考えさせられました。寄生虫症の流行と対策は、今日の国際社会における重要な課題でありますが、同時にその歴史は、郷土・地域社会の人々の歩みを伝えるものであることも確認できました。

なお、今回の宮入氏のご講演内容が、『宮入慶之助記念館だより』の第28号(2019年10月18日)に、薬袋・太田両氏のご講演が、同じく第29号(2019年12月16日)に掲載されています。また、山口館長のご講演は、同紙の「慶之助の生涯探訪」として今後連載予定とのことです。『宮入慶之助記念館だより』は、同館ホームページの「記念館だより」(https://miyairikinenkan.com/kinenkangaiyou/kinenkan_tayori/)から閲覧することができます。

(市川智生・井上弘樹)